24F 特集ルーム
「プリントの耐久性」
前回は変退色の種類について、
光によって色褪せる「明退色」と、温度や湿度による「暗退色」があり、
光には大変弱いという話でした。
で、今回は変色についての後編として、具体的なプリンターを取り上げて、
インクの種類と保存方法の違いによる実験結果をお伝えいたします。
参考として、日本写真芸術学会の発表資料の強制劣化テストについて
少しお伝えしますが、計算で割出した数値での比較なので
目安としてみてください。
暗退色(暗所保存性のテスト)は、保存温度を高めて強制劣化テストを行う
「アレニゥスプロット」の手法により、
相対湿度70%RH、70度Cで28日間と、85度Cで21日間のテスト。
明退色(明所保存性のテスト)は、蛍光灯とキセノンランプによる
アトラス製の強光照射装置を使用して、
50kluxと、100kiuxに換算してのテストです。
使用プリントは、
インクジェットプリント
・・・エプソンプリンター+同社スーパーファイン専用光沢紙
ピクトロプリント
・・・フジピクトログラフィー+専用ペーパー
昇華型プリント
・・・コダック昇華型プリンター+専用ペーパー
フォトキレートプリント
・・・コニカフォトキレートプリンター+専用ペーパー
銀塩写真ペーパー
・・・フジカラー・スーパーFAVペーパー
・・・コニカカラー・QAペーパータイプA6
・・・コダック・エクタカラースープラ2ペーパー
という種類でのテストです。
数字で説明しても分かりづらいと思いますので、
ぼくが感じた感想を書きたいと思います。
「暗退色(暗所保存性のテスト)」
インクジェットプリント
強いですね。Mがわずかに抜けただけでほとんど変色ナシです。
ピクトロプリント
CとMが少し抜けています。にじみも確認できます。黄ばみあり。
昇華型プリント
Cが抜けています。にじみがひどい。こりゃだめだね。
フォトキレートプリント
Mが乗ってきている?でも変色は少ない。
フジカラー・スーパーFAV銀塩写真ペーパー
Mに転んでいます。黄ばみもあり。
コニカカラー・QAペーパータイプA6銀塩写真ペーパー
Y抜けが目立ちます。少し黄ばみもあり。
コダック・エクタカラースープラ2銀塩写真ペーパー
Mに転んでいます。黄ばみもあり。銀塩の中では半分程度の耐久性。
順位を付けるとすれば、
一位・(インクジェット)→(フォトキレート)→(フジカラー)→(コニカカラー)
→(コダック)→(ピクトロプリント)→(昇華型プリント)ビリ^_^;
意外にも、インクジェットが暗所では長持ちするんですね。
「明退色(明所保存性のテスト)」
インクジェットプリント
ひどすぎて問題外。見るに絶えない。
ピクトロプリント
全体的に薄くなるが、特にM抜けで、変退色大きい。
昇華型プリント
ある程度までは踏ん張るが、C抜け。
フォトキレートプリント
C抜けだけど、変色少ない。
フジカラー・スーパーFAV銀塩写真ペーパー
さすがに銀塩ペーパー、ほとんど変化ナシ。
コニカカラー・QAペーパータイプA6銀塩写真ペーパー
すこしM抜け。百年プリントの名が泣いている。
コダック・エクタカラースープラ2銀塩写真ペーパー
すこしM抜け。銀塩の中では一番ひどい
順位を付けるとすれば、
一位・(フジカラー)→(コニカカラー)→(コダック)→(フォトキレート)
→(昇華型プリント)→(ピクトロプリント)→(インクジェット)ビリ^_^;
堂々と銀塩写真ペーパーの上位独占。特にフジはすばらしい。
まあ、強制劣化テストなので目安にしてください。
では、ぼくがやってきた実際の耐久テストではどうなのでしょうか。
期間が半年と短いので暗退色は判別不可能ですので、
明退色についてのみのおはなしです。^_^;
使用材料は、
銀塩写真フジ(フジ・NEWスーパーFA9プロフェッショナルCG)
銀塩写真コダック(コダック・エクタカラーポートラ3)
ピクトロペーパー(PS3-DSドナー+PS3SGペーパー)
熱転写プリント(アルプス熱転写プリンター+専用平滑紙)
インクジェットキャノンA(BJC 455J)
インクジェットキャノンB(WBJ F600)
インクジェットエプソン(PM 3000)
と、これだけやってみました。
「直射日光の当たる窓越し」でのテスト
銀塩写真フジは、
半年経っても比較しなければ変色ナシと言っていいほど。
銀塩写真コダックは、
3ヶ月ほどでなんとなく変色したと感じる。
ピクトロペーパーは、
約2週間で変化が現れ、1ヶ月もするとかなり薄くなる。
熱転写プリントは、
半年後も全く変化ナシ。最強かもしれない。
インクジェットキャノンAもBも、
1週間もたなかった。ひどすぎる。
インクジェットエプソンは、
キャノンよりもマシな程度。やはりひどい。
「部屋の壁」でのテスト
銀塩写真フジは、
半年では変色ナシ。
銀塩写真コダックは、
やはり半年では変色ナシ。
ピクトロペーパーは、
1ヶ月で変色を感じる。半年で黄ばみも出てきて薄くなる。
熱転写プリントは、
半年後も全く変化ナシ。最強かもしれない。
インクジェットキャノンAは、
3週間ほどでなんとなく変色。半年たつとひどいもの。
インクジェットキャノンBは、
1ヶ月ほどで変色。半年でかなり薄くなるがAよりはいい。なぜだ?
インクジェットエプソンは、
キャノンよりも変色少ない。
と、まあ、こんな感じでした。
画質と耐久性、プリントコストなど、プリンター選びには
いろいろな要素があると思いますが、プリンター本体の値段だけではなく、
プリントの耐久性も考慮してみるのも必要だと思います。
また、手持ちのプリンターがすべてではなく、
使用目的に合った出力方法でプリントされることもおすすめします。
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