5F 知恵と知識の間
[連載] 入力の知恵・画像の知識
フラットベッドスキャナーを使いこなそう! Part4
●ハイライトとシャドウの再現能力
印刷物の画像を観察評価するときに、プロの管理者が最も重要視する
ところは、その画像の中のハイライト部分にある階調とシャドウ部分の
階調(一番明るい部分よりもごくわずかに暗い部分と、一番暗い部分よりも
ごくわずかに明るい部分)なんです。
これをひらぺったくいうと、【紙地の白に微量のインキが
印刷される部分と、インキかベタではなく微量に
白(紙地)の点がのこる部分】ということになる。
これらの部分を「ハイライト点」「シャドウ点」と呼ぶ。
印刷物の階調は、限りがあります。
それは、写真のカラープリント(反射原稿)や、リバーサルポジフィルム
(透過原稿)と比較すると、濃度のレンジ(幅)には大きなちがいがある。
元になった原稿を横に置いて印刷物と比較してみるとよくわかります。
元原稿の黒い部分には「しまり」があり、黒がより濃い純黒です。
これを「最大濃度が高い」と言い、原稿の白い部分から
黒い部分の[濃度の幅が広い:原稿濃度域が広い)とも言う。
印刷物の最大濃度は元原稿よりも浅いので、同じ濃度で合わせると
ある原稿濃度以上は再現しようにも再現できなくなる。
そのままでは原稿の途中の濃度から先が最大濃度で飽和してしまい、
階調(濃度の変化)が無くなってしまうんです。
そこで、印刷物の画像は「階調圧縮」をします。プリンタ−も同じ。
「圧縮」というと、JPEG圧縮などファイル容量を小さくすると
思われるが、まったく別の意味です。
階調圧縮はややこしい話なので、
きちんとモニターのキャリブレーションをして、自分の眼で診て
信用できるモニターにしておくことがいちばん簡単な解決方法です。
再現の違いをユーザー自らがある程度意識して操作しなければ
ならないわけは、デスクトップスキャナが印刷・プリント出力用の
画像データを得るためには特化されていないからなのです。
階調圧縮の必要性は、出力された画像の再現濃度域が
原稿濃度域よりも狭いからしかたありませんね。
それに、デスクトップスキャナの濃度を読み取る能力に限界があります。
デスクトップスキャナは、光センサーにCCDを使っているが、
CCDは、シャドウ部分の濃淡変化を読み取る能力に限界がある。
この能力のことが、前回も出てきた「ダイナミックレンジ」ですね。
たとえば、原稿のハイライトの濃度値が0.1の部分からシャドウの
濃度値が3.5の部分までの明暗変化を読み取れば、
ダイナミックレンジは3.4という具合です。
さて、ハイエンドスキャナの光センサーに使われている
「フォトマルチプライヤー」のダイナミックレンジは4.0を
かるくクリアーしているけど、一般的な家庭用の
CCDのダイナミックレンジはせいぜい3.0弱程度のものが主流です。
ところが、原稿濃度域は反射原稿で最大2.8程度、透過原稿では
3.3〜3.6程度はある。CCDを使った家庭用スキャナでは、
使い方しだいで、反射原稿なら最暗部までなんとか濃淡変化を
読み取れるけど、透過原稿は原稿の暗部の微妙な濃淡変化を読み取れず、
ノイズを拾ったり、黒くつぶれて(白く飛んで)しまうんです。
これらの理由から、デスクトップスキャナで写真原稿を
スキャンして優れた品質の画像を得ようとするときには、
それなりのスキャンテクニックと、きちんとポイントをおさえてある
基本性能の備わったスキャナーが必要なんです。
同じ価格帯のものでも、驚くほどきれいさが違うのは、カタログスペック
とは違う部分でこのダイナミックレンジを生かしてあるかどうかです。
ちょっといいものは、ランプパワーの調整ができ、多くがカバーできます。
調整の付いていないスキャナーでも、透過原稿に関しては裏技があります
のであらためてご紹介したいと思っています。おたのしみに。
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