92F 特集ルーム
「見る写真と手にとる写真」
昔小学校のころ、国語の漢字の書き取りってあったよね。
読むだけでは覚わらないから、書いて頭に入れる学習法です。
漢字って、書けば書くほど自分のものにできるけど、
見たり読んだりしただけでは正しく覚えることができません。
漠然と字体のバランスは思い出せるけど書く事ができない。
写真もこれと同じなんです。
写真では書くって事は、プリントするって事です。
実は今に始まったことではないのですが、デジタルカメラが普及するに従って
写真作りの技術に危機感を感じています。
ネット等で情報が手に入りやすくなった分だけイメージは豊かになっても
それを形にする技術はみるみる低下しているんです。
これはDPEをしてても感じているのです。
ちょうどそれがデジタルカメラの普及とダブっているのは
なんらかの関係があるに違いないと思って注意していたら
やはり見る写真と手にとる写真の違いに原因があったようです。
ここで言う見る写真とは、携帯電話の画面やPCのモニターディスプレイに
写真を表示させてその画像を確認する行為です。
器機が表示する画像は、物質そのものではなく一時的に表示するもので
眺める対象となり、現物と比べて観察力を集中することができない。
DTPでも、画面上ではタイプミスを見過ごしやすいので、
わざわざプリントして文字をチェックするのもこのためです。
これに対してプリントされた画像は、そのプリント自体が形であり
現物である。
だから手にとって集中して観察することができる。
よって、この時の撮影からプリントまでの全てについて集中して理解でき、
この時の撮影テクニックを自分の物にすることができるんです。
写真はモニターで見ただけでは身に付かないもので、
プリントして手にとって観察してはじめて身に付くんです。
便利なデジカメがモノを創る力を弱らせてしまっているんですよ。
便利さって、楽をしてなまけるための使い方と、
可能性を推し進めるための使い方があるんです。
この罠に気をつけてね。

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